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徒然とつらつらと、無為かつ怠惰な生活を書き綴ります。
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カブト妄想

 ……結局マジで書いてしまった。阿呆の最上級だな私は。
 阿呆estだ。どう読むんだいそれ。阿呆estと読みます。いやごめんかなり
かっ飛ばしてるよ今日は。



 ええと……まず、最初に。
 この作品は基本的に、仮面ライダーカブトを視聴していた方向けに
書かれた妄想ネタです。言うまでもねーですが。
 ほんでもってネタ元は鋼屋ジン先生であることも書いておきます。

 で、作中ではオリ展開そこそこ出てますので敢えて突っ込まないでくださると
幸いかと判断します。
 ネタ的に言えばいわゆる『剣シナリオ』ですが、キャラ名とかはそこそこ
改変してますのでお気を付け下さい。そしてじいやが私の作中では何故か
「ねえや」になってます。シスプリのあの人みたいな感じで。


 二時間程度で書いたものなのでお目汚しかと存じますが。
 もしこれがネタとして受け入れて頂けるのなら嬉しいです。いや、
ネタと言うには若干重いですけどね。







 無人のまま放置されたビルの屋上。なかなかの立地であるのに
何故この場所が放置されているのか。
 その理由など刀子は知らない。だが、死に場所には良い所かもしれない
とは思う。

「いい眺めだよ、アラタ。わたしが守りたかった街が、君が守って
 いく街が、ここからならよーく見える」

 相対する、碧い鎧を纏った男に刀子はそう呼び掛ける。鋼の
仮面に隠された表情は刀子からは見えるはずもないが、それでも
彼の心に尋常ならざる葛藤が生まれていることは容易に想像出来た。
 嬉しいと思う反面、哀しくもある。
 刀子は自嘲気味に微笑んだ。

「さあ、それじゃ始めようか……戦いを」
「そんなこと、言うなよ」
「言いたくはなかったよ? でも駄目」
「何が駄目だって言うんだ!」

 怒声をあげる加賀美。刀子は微笑みを苦笑へと変えた。この期に及んで
「何が」などと言ってくれるとは……まあ思ってはいたが。つくづく
アラタは優しいなぁ、などと思う。

「わたしはワーム。わたしは人殺し。わたしは“マスクドライダー”の
 敵。……充分だよ、殺し合うには」
「やめろ」
「無理。だって、ほら」

 言いながら、刀子は自分の身体が異形へと変貌する感覚を受け入れる。
 意識はそのままに、身体の表層は鉄より堅く、手の爪は獣の牙の
ように鋭く、そして表情は白銀の面当てに隠される。ともすればその姿は、
人のカタチに進化した蠍のようで。
 刀子の声で、スコルピオワームは言う。

「わたしは今、総てのワームの頂上にいる。カブトやホッパーが戦って
 いるあの男も今はわたしの下だよ」
「っ……」
「わたしはここでマスクドライダーたちを斃し、何の障害もないままに
 人を殺し続けるよ、アラタ」

 『敵』の姿を目の前にして、スコルピオワーム=刀子は突撃の姿勢をとる。

「それが嫌なら」

 爪を、棘を身体の正面に構え、その足でコンクリートの摩擦係数を捕らえて、

「わたしを斃してみなよっ!」
「くそぉぉぉっ!」

 闘争本能のままに走り出すスコルピオワームを、『戦いの神』ガタックは
双剣ダブルカリバーで出迎えた。両者の間に火花が散り、白銀と紺碧を
一瞬だけ朱色に染める。

「ギアを上げるよ」

 言いながらスコルピオワームは超高速の世界に突入する。爪を振り、
その攻撃結果が火花として具現化するのもワンテンポ以上遅れるような、
そんな速度だ。しかし、

<Clock up>

 電子音と共にガタックもその速度に同調した。音速すら越えたのか
互いがぶつかりあう音以外は聞こえなくなるほどに世界から切り離され、その
中で両者は戦闘を続行する。
 戦況はスコルピオワーム子の優勢。無手の攻撃はそう致命的というわけでも
なかったが、ダブルカリバーで捌ききれない爪撃は容赦なく蒼の装甲を抉る。
 ガタックの戦闘能力はこの程度ではないはずだ。ならば。刀子は渾身の力で
爪を振るう。

「手加減? わたしはそんなに弱いかなぁっ!?」
「ぐぁ……!」

 鈍い音と鋭い傷跡。ダブルカリバーの防御を抜けて入った突きが、加賀美の
身体を打ち据えた。かなりの有効打である。
 たたらを踏むガタック=加賀美に、スコルピオワームは、神代刀子は──


 ──寂しげに微笑した。


「本気で殺しに来ないと、わたしは斃せないよ。……わたしも死にたくはないもの」
「……戦う理由なんかない! お前は死にたくなくて、俺はお前を殺したく
 ないんだぞ? 何で戦わなきゃいけない!?」
「だからそれはさっきも言ったよ。わたしはワームだって。人を殺してるって。
 わたしが居なければ、きっとアラタは本物のわたしに出逢えたんだ」
「本物でも贋物でも関係あるか……お前はお前だ! 岬が、ねえやさんが、天道が
 好きな……俺が大好きな神代刀子のはずだろ!」

 鋼の装甲に罅を受け、生身の身体に打撃を受け、心が軋みをあげようともなお、
加賀美は双剣を握って立ち上がった。

「まだ聞き分けがないってんなら、ぶっ飛ばしてでも連れて帰る。お前はちょっと
 困ったところもあるけど……でも良い奴なんだって、普通の女の子なんだって
 ことをみんなで分からせてやる!」

 叫ぶ加賀美に、刀子はしばらく何も言わずに力なく微笑んでいたが。

「戦って。『ガタック』」

 それは、本当ならばただの呼び名であったはずだが──
 戦いの神の名で呼ばれたガタックゼクターは、強敵を前にしてある
システムを起動した。

「──が、ぁ──!?」

 赤い靴。そんな呼ばれ方もするらしい。ただゼクターにとってはそれは
システムのひとつでしかなかった。
 適格者が戦闘意欲を失った時、強制的にその身を戦いへと向かわせる、
一種の安全装置。
 かくして暴走スイッチは発現した。

◆◇◆◇◆◇

 視界には何も入らない。
 耳に音も響かない。
 触覚だけは残っている。殴り、蹴り、斬り、蹂躙する感覚だけは。
ただ、何をそうしているのかは判らない。

(──殺せ)

 黙れ。

(──斃せ)

 煩い。

 殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺血血血血血血斃斃斃斃
 斃斃斃斃斃倒倒倒倒倒倒斬斬斬斬斬斬!

「……君の勝ちだよ、アラタ」

 気がつけば──
 ボロボロになったスコルピオワーム=刀子を、仮面ライダー
ガタック=加賀美は叩き伏せていた。首筋にはダブルカリバーが
連結形態の大鋏として突き付けられ、決着はどう見ても明らかな状態で。

「勝てなかったかぁ……さよならだよ、アラタ」
「……違う」
「違わない。総てのワームはマスクドライダーシステムに
 斃されなきゃいけない。それがわたしでもね」
「やめろ」

 こんな時に――否、こんな時だからこそか――刀子は微笑んだ。

「アラタ」
「…………」
「わたしの名乗り、覚えてる?」
「……神に代わって、刃を振るう女、ってヤツか?」
「そう。『総てのワームはわたしが倒す』って」
「それは……」
「その中にはわたしも含まれてる。神代刀子はわたしを含めた総ての
 ワームを……此処で倒す」
「勝手だ」
「そうだね、でも、これが『わたし』だから」
 
 言って、スコルピオワームではなく『神代刀子』が綺麗に微笑む。

「だから良いよ。今ならわたしは神代刀子として死ねるから」
「……っ……」
「またね、『ガタック』」


〈Rider Cutting〉


◆◇◆◇◆◇

 主の私室に突然現れた気配に、彼女は少し驚きながらも部屋の方へと
歩き出した。今頃なら、主は加賀美新と連れ添って出かけているはずだが……?
 不審に思いつつも、主──神代刀子の部屋の前に立って扉を数回ノックする。

「お嬢様?」

 返事はなかった。
 しかし確かに部屋の中には誰かがいる。気配はいっそう近くなり、
そして確認したところ鍵は開いているようだった。
 多少、躊躇する。が、

「……失礼します」

 古く、しかし見事な装飾が施されたドアノブを回す。軋みひとつなく
開いたドアの向こう側には果たして、

「お嬢様?」
「……ああ、ねえや」

 大きめのロッキングチェアに半ば仰臥の体勢で身を任せ、神代刀子は
生まれた時からの付き合いの侍女を迎え入れた。侍女の方からでは背もたれに
隠れて表情は見えなかったが、声の様子からすると疲れているようである。
 何故ここにいるのか。加賀美新と共に街に繰り出したはずではなかったか。
そんな疑問が彼女の口をついて出る、それより先に。

「……フっちゃった」
「はい?」

 そして彼女は唐突に理解する。
 刀子が座っているはずのロッキングチェア。
 そこには誰の体重もかかってはいない。
 神代刀子はそこにはいない。
 それを理解してからは早かった。


 ――終わったのですね。


「──お嬢様」
「なに?」
「私は……」

 欺瞞と矛盾に満ちた日々が終わりを告げる。仮面を被り、そしてそれでも
幸福に満ち溢れていた日々が。
 きっと主と語り合えるのは今が最期だ。ならば、

「私は、お嬢様に仕えることが出来て幸せでした」

 一年足らずの虚ろな道化芝居の中で、本当に誇れることを、彼女は伝えた。
 刀子は気配で緩慢に微笑み、その二十年分の真実を受け止める。

「ねえや、眠ってもいいかな?」

 兄の仇を討ち、そして亡霊はその存在を失った。そんな彼女を
引き止めることは出来ない。

「……はい……っ……ごゆっくり、っ、……お休みを……」

 泣いてはいけない。侍女が主の前で涙を表に出すなど、あっては
ならないことだ。そんなことをすればまた、自分は夢を見てしまうに
違いない。死んだ主に仕える、そんな幸せな夢を。

「ありがとう、ねえや」

 生者として二十年。そして亡霊として一年足らずの、それが答えだった。


 刀子が空に還っていく。



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コメント
有り難いことです
ネタ自体は莫迦以外の何物でもないんですが、いざ書いてみると
本編がかなりヘビーな内容だったせいもあって真面目に
なっちゃってますな。望むところではありますが。

ガタックカリバーが妙に強かったのは演出です(ぇ
いや、まあカブト以外の歴代仮面ライダーだって、カタログスペック
どおりの戦闘能力をガチで発揮してたら世界滅んでる
気がしますしね(苦笑

ヴィレッタさんですかッ!?(汗
いや……私的イメージだとそれこそ性格キッツイ委員長タイプの
人が矢車さんな気が。……でも誰になるんだ、それだと。

刀子ルートの方はちょっとまだ下書き程度しか手が回って
ないのですが……まあ、来週当たりには何とか。
ハッピーエンドと呼べるかどうかは微妙なんですが、
全体的に丸く収めますので……ご期待下さいませ。
【2007/01/26 21:03】 NAME[管理人 天話] WEBLINK[] EDIT[]
エクセレントッ……!
……素晴らしい。
カブト最終回(ちゅーか最終三話)を見てモヤモヤしていたのが鋼屋ジン先生の日記と、この「剣女体=刀子」シナリオでスッキリした様な……。関係無いですけど昨日友人と話したんですが、ガタックカリバーって時々妙に強くなりません? カッシス最終戦とか、三島との最終決戦とか。ハイパーゼクター折られたのに何故カリバーでダメージが……。

とりあえず、マジで作るべきだと思われるのですよ、カブト女体化ゲー。ゴスロリやさぐるまちゃんを癒してあげたい。イメージは……性格悪いwスパロボのヴィレッタさんとか妄想。……性格がやさぐるまさんで、ゴスロリ衣装のヴィレッタさん……。ウワ、我ながら凄い妄想だなぁ……。
……イイかもなぁ(ぇー

次回の刀子ルート最終章を楽しみにしています。全ルートで唯一、最終章前にヒロインが消えてしまった訳ですが……。加賀美はどう動くのか。う~ん、続きが楽しみです。楽しみです。
【2007/01/24 23:30】 NAME[K-14] WEBLINK[] EDIT[]


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