(やった……?)
魔法には反動も反作用も無いが、それでも一発の手応えというものは確かに
存在する。高機動魔法から零距離砲撃までへの一連の流れはまぎれもなく必殺の
機で放ったものであり、あのタイミングでプラズマスマッシャーを防御できるほどの
防御を張れるのは、なのはやザフィーラのような極端な防御力を持つ魔導師ぐらいだろう。
と――
魔力の爆発で生じた煙が晴れる。
次の瞬間フェイトが見たのは、不思議な光と紋章を浮かべた盾だった。
「なッ!?」
「……痛いじゃない」
半透明の防壁がその姿を薄れさせ、空中に屹立するその女の姿がフェイトの
目に映りこむ。アララ・クランの艶やかな笑み。
フェイトは狼狽していた。
最適の攻撃位置(マキシマム・キルゾーン)へと瞬時に移動してから放つ
最大威力の攻撃(マキシマム・ダメージ)。音速に近い瞬発力が可能にする銃舞(ガンプ)。
間違いなく必殺、必倒、必滅の一撃であったはずだ。クロノやシグナムが
相手だったとしても勝利を確信できた一撃だったはずだ――!
「――ッ――」
<Sir!>
愛機の声も、フェイトを落ち着かせるには至らない。
故に。
「迅雷(はや)いわね……お嬢ちゃん。なら、これはどう?」
アララが薄い唇を一舐めして朗々と唄ったその歌に、少女は気付かない。
我は全ての母の母 美の極北 全ての恋の源たる赤にして赤に嘆願す
それは一人の女よりはじまる女の鎖
赤にして薄紅の我は 万古の契約の履行を要請する
我は母を助けるため命を与えられし一人の娘
クラン・ロールより現れて歌を教えられし 一つの情熱!!
我は生み出す贖罪の檻 我は号する心を縛る美しき牢獄!「完成せよ!」
<――Zamber Form>
「え?」
「――絶愛の檻!!」
赤い、どこまでも赤い荊の枝が、フェイトの全視界を覆い尽くした。
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