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徒然とつらつらと、無為かつ怠惰な生活を書き綴ります。
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「――避けきってみなさいよ!」

 色とりどりの弾幕が視界を埋め尽くす。一発の威力は大したことは無さそうだが、
自分の防御力を考えれば受けきることは元より論外だろう。
 
「……急ぐよ、バルディッシュ」
<Yes  Sir>

 フェイトを包み込むような形で広がる魔力弾はいささかの減速もせずに
彼女の機動を阻害するような動きを見せた。一発でも受ければ、後は
こちらが消耗するまで撃ち込まれて終わりだろう。
 ならば。
 フェイトは愛機を握る諸手に力を込めた。これからすることは、渾身の
精神統一を必要とする。
 ひときわ大きな赤い魔力弾がフェイトの目と鼻の先に迫った瞬間、

<Blitz  Rush>

 弾幕がフェイトの姿を飲み込んだ。小爆発は誘爆を次々と引き起こし、漆黒の
外套を纏った少女を掻き消していく。
 少なくとも、アララ・クランの目にはそう映っていた。唇の端をつり上げて嗤う。

「もう終わりかしら?」
「そうですね」

 瞬間的な怖気を感じて。
 第1世界の戦士階級だった頃を思い出しながら、アララは素早く振り返った。
並外れた機動力の敵と戦うのは初めてではない。大抵は後ろに回り込まれていて、
そしてその後に。
 目を見開くハメになる。雷電を纏う左手を掲げた少女が、零距離でこちらを
狙っていたのだから無理からぬことではあるが。
 少女の呟きはむしろ他人事のように遠く聞こえる。体感的なことであるに違いない。
現に、アララには少女の瞳に宿った決意の色を見極められる程度の距離感だった。
 直後に。

「撃ち抜け、豪雷――」<Plasma  Smasher>

 爆発。



 ダンデオンと名乗ったその男に肉薄し、拳を振り上げると。
 鈍色の盾が――いつの間に現れたものだか――目前に現れた。ザフィーラは
構わずに全力で拳を盾に叩きつけると、その反動で後ろへと飛ぶ。
 次の瞬間には、もう一枚の盾がザフィーラの残像を薙いでいた。

「厄介な盾だ」
「攻の円盤(ディスク)にして守の鎧(アーマー)。我が攻防に死角は無い。
 さあ、どう戦う、騎士よ」
「……主が役割を無事果たされれば我の勝利だ。貴様の攻撃を全て防げば、
 最終的には我らが勝つ。それもそう遠くないうちにな」

 言いながらも、円盤が放つ真空の刃を両手に発生させた魔法陣で打ち消す。
 主との誓いがある。一撃も受けるつもりはない。
 
「だが――」

 変身魔法。
 ザフィーラは本来の姿である、蒼い毛並みの狼へとその姿を変化させた。
鎌鼬の間を縫って、空色の獣が疾走る。

「時間稼ぎをするつもりはない。急ぎ主の元へと馳せ参じなくてはならんのでな。
 貴様の攻盾と我が鋼盾。いずれが砕けるか――」
「良かろう。もはや一切の容赦も無い……我が力を見よ!」

 
 幽界にありて隔てられ 時において今はない
 だが遠くにありても風だけは今も故郷にある

 我が故郷の精霊達よ 故郷の風よ
 帝国を守れ 帝国の誇りを守れ

 偉大なる故郷の大地 緑の王にして柊の我は嘆願す
 ここなるは故郷の土 ここもまた紫の帝国 永遠の落日の国

 我は大地と契約せり 一人の農夫
 地を耕し 万物の均衡を図りし一つの天秤
 古き盟約によりて 我は命の麦穂を刈りとるものなり
 生もて次に伝えたり!



「完成せよ! ――双面の護り!!」
「――縛れ! 鋼の軛!!」
 

「チェーンバインドッ!」

 淡いライトグリーンの光が、その声と共に異形を捕らえる。どれもこれも
自分たちのよく知る『魔法』とは似ても似つかない技術で生み出されたような、
有機的な印象すら持つ化け物たちである。が。

「いい位置だ」
<Stinger Snipe>

 だからと言って恐れる必要はなかった。いや、恐れてなどいられないと言うべきか。
 身動きを封じられた怪物たちを、今度は群青の魔力光が次々と射抜いていった。
光は円環を描いた次の瞬間には他の敵を突き刺し、数秒と経たずにその
開けた空間に存在する異形を消滅せしめる。
 数十単位の敵を一発の射撃魔法で一掃するという、ほとんど神業に近いことを
やってのけたクロノの姿に、ユーノは思わず苦笑した。この分では自分はおろか、
なのはやフェイトですら彼に一対一で勝つのは困難に違いない。
 と、その彼が不意にこちらを向いた。

「……ユーノ。ねじれた城……アーカウ要塞について、君はどれだけのことを
 知ってるんだ?」
「本当なら専門外なんだけどね。ただ、無限書庫に断片的な情報があったもんだから。
 呼び出しがあったときに掻き集めてざっと目は通したよ」
「それで?」
「はっきり言おう。状況は最悪だ」

 話を聞く気があるのかないのか、クロノはまた近くの壁にストレージデバイス
”デュランダル”を突き刺して、

「それはあと数時間もすればこの時空世界が滅ぶってことか。それとも
 もっと他の理由か?」
「後者だよ」
<Break Impalse>

 崩壊の振動波を撃ち込まれ、壁が崩れる。先程からずっとこの調子だ。
「どうもこの先からフェイトの魔力を感じるな」などと言い出し、合流するために
わざわざ最短距離に道を造っている。

(……やっぱり君はフェイトに妙に甘いよな)

 この先にいるのが他の誰かであるなら、放っておいても問題ないとばかりに
ずんずん前進していたに違いない。フェイトもまさか他の連中に後れをとるような
魔導師ではないことぐらいクロノは理解しているはずだが。

「……やっぱりシスコンじゃないか」
「何か余計なことを口走らなかったか、この淫獣」
「誰がだよッ! あー、もういい。話の続きだけど」
<Stinger Ray>

 高速で飛翔する青い飛針が、標的をろくに見もしなかったクロノの手から放たれて
突如現れた敵へと突き刺さった。四散する敵。
 ユーノは噛み締めるように呟いた。

「……このまま突き進むと、僕らは世界の秩序と戦うハメになりそうだよ」


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