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徒然とつらつらと、無為かつ怠惰な生活を書き綴ります。
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 たった一歩でフェイトの体は最高速に達した。砂塵を巻き上げて、
漆黒を纏った金色がシグナムへと一直線に迫る。
 突進の勢いのままバルディッシュ・ザンバーを左から右へと振り抜く―――と
見せかけて、フェイトは身を沈ませた。初撃はフェイントだ。
 更に下段から上段へと大剣を逆袈裟に跳ね上げる。しかしこれすらも
手甲を掠るだけのフェイクである。この速度に至って、フェイトの斬撃には
ブレが無かった。彼女の澄んだ正確な太刀筋はシグナムをして賞賛する程で、
それをこの速度で振り回せば如何にシグナムといえども捌ききるのは困難だろう。
 そして―――

(これで……!)

 二撃続いたフェイントの後、振り上げたザンバーを大上段から一気に斬り下げる。
これが本命だ。決まったという確信すらある、最高の一撃。
 フェイトは胸中で歓声を上げた。
 
(勝っ―――)

<Defenser>

 直後に。
 フェイトの視界に入っているのは、傷を受けたシグナムではなく、雲一つ
ない青空だった。妙に体が痛い。ヒリヒリとした打撲の痛みだ。

「……あれ?」
「速度に溺れたか、テスタロッサ」

 シグナムの声に、がば、と起き上がって振り返る。
 シグナムは手傷こそ負っているものの平然と立ち、レヴァンティンを納刀して
こちらを見ていた。ついでにどう見ても、さっきの一撃が当たったようには見えない。

「お前の剣は確かに疾い。だが、三度もフェイントを入れてはな。いくら何でも、
 お前が三つの太刀筋を描く間にならば私の剣速でも一閃ぐらいは出来る」

 言われてフェイトは自分の間違いに気づいた。
 速度という決定力を持っているのだから、決めるのなら一発で決める
べきだったのだ。慎重になりすぎて自身の長所を殺す結果になってしまった。 
「さて、今回も私の勝ちだな。これで勝率は七割五分といったところか」
「……うう」

 バルディッシュを待機形態に戻し、一人で反省会を始める。これでは勝率
五割すらほど遠い。何とかしなければ。

「まずは帰るぞ、テスタロッサ。傷は早めに治療しておかんと、主が心配
 されるのでな。お前もクロノ執務官たちに心配をかけるわけにはいかんだろう」
「ええ、それは……」

 少し肩を落として、まずは早く帰って傷の手当てだけはしておこうと
オペレーターを呼び出す。訓練室が穴だらけになるという理由で、フェイトと
シグナムの模擬戦は『訓練室では』禁じられているため、二人はわざわざこの世界に
転送してもらってから模擬戦にいそしんでいるのである。
 と―――

<Sir.emergency call to you.>

「非常連絡? バルディッシュ、内容は」

<Scramble request>

「緊急出動……ロストロギアの暴走?」
「こちらにもたった今、念話が入った。どうも大きな事件のようだ。
 我らどころか主はやて、高町にも同様の要請が行ったらしいな」

 どうやら久しぶりの全員集結らしい。この分だとユーノには捜査本部での
作業要請が行っているような気がする。アースラスタッフは総出に違いない。

「……まだ大丈夫? バルディッシュ」 「仕事だ、レヴァンティン」
<Of course> <Jawohl>

 それぞれの愛機の誇らしげですらある返答に、力が入る。

『フェイトちゃん、シグナムさん。連絡は聞いた?』

 突如として空間にモニターが広がった。姉同然の女性の顔が、緊迫した表情で
こちらを見ている。

「かなりの大事のようだが。我らやテスタロッサどころか、別部署の高町まで
 駆り出すとは……」
『ロストロギアの暴走で、機械兵がもーなんかすんごい数出てるの!
 敵が7で空が3!』
「エイミィ、私たちの転送は?」
『10秒待って! 転送先にシャマルさんが待機してくれてるから、回復は
 そっちでよろしく!』
「了解した」

 エイミィとの連絡と入れ替わりに、足元に転送魔法陣が具現化した。
10秒どころか5秒で済んでいる。つくづくとんでもなく有能なオペレーターだ。

「やれやれ……休む間も無く、か」
「不満ですか?」
「平和ではない、という点だけはな。それ以外は満足している」
「……私もです」

 数がどうだろうと関係ない。ヘタをすれば、フェイトたちが現場に着くまでに
現場は制圧されている可能性すらある。彼女たちならやりかねない。
 
「油断はするなよ」
「お互い様です」
「こいつめ。油断などするものか」

 互いに苦笑して、いよいよ強まってきた魔法陣の光に目をつぶる。
 次に眼を開けたときは戦場だ。
 萎えることなく燃えさかる闘志をもう一度噛み締めて―――
 
 二人の姿は砂漠から消失した。
 妙に長くなったので今日はこの辺で。
 他の連絡とかは明日にでも。
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