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徒然とつらつらと、無為かつ怠惰な生活を書き綴ります。
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Fate/Zero vol.4 「煉獄の炎」

 ネタバレ注意。──書いたからね?

 参った。
 間違いなくこれは虚淵玄の──と言うか、虚淵にしか書けない物語。
 こんな絶望しかない英雄譚を最後まで紡げる氏の力量と文章特性に、改めて
感服する次第。真っ当なライターなら途中で心が折れてるよこんな話。

 まあ細かい総評は後でするとして、とりあえず四巻単独の感想。

 プレラーティーズ・スペルブックって、要するにナコト写本のそのまた
写本のことだったのか。つーか何で気付かんかった、俺。

『これの真価を完全に発揮させてやることは、人外の魔であるサーヴァントにしか
叶うまい。きっと──今夜セイバーの手綱で地を駆けるためだけに、
こいつはこの世に生を受けたのだ。』
 セイバー、バイクを駆って疾走。
 ……つか、『ヴェドゴニア』のデスモドゥスといいこれといい、虚淵の旦那は
何故『バイクの形をしたナニカ』(モンスターマシン)の描写に全力全開か。
いや、燃える展開なのだけど。
 そして甲冑で強化されるV─MAX。それ何てビートゴウラム?
 重ね重ね燃える展開なのだが。

「……ボ──ボクが……ボクなんか、で……本当に、いいのか……
オマエなんかの隣で、ボクが……」
 この物語最高の萌えキャラ(虚淵、奈須、武内ご三方の公式見解)、
ウェイバーのデレ解放。
 ……つーか、どこまでも漢だなイスカンダル!

 やっぱりお前がバーサーカーか。
 どう考えてもこの御仁しかいないとは思ってたけど、実際にこの対面を
為さしめるあたり虚淵の旦那は果てしなく悪辣だ。

 そして巻き起こる絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望。
 ……いや、解ってたことだけど……本当に容赦ないねこの人。
 清々しいまでのこの絶望だけがFate本編の救済に繋がると解っては
いても、どうして氏はここまで物語に対して冷徹になれるのか。

 ところで。
 本編とは全く関係ない後書での話なのだけど、彼の言葉はどう考えても
反曲芸商法のそれにしか思えない。
 ぶっちゃけ反曲芸商法思想の持ち主はこれだけで一読の価値有りかもしれない。
 そのへんどうですか桃桜さーん?

 そして狂おしく個人的な話だけど、一緒に買ったのが『生徒会の一存』で
良かったと心底思った。
 これの後はさすがに口直しが必要だ。それも途方もなくあたまわるいの。


そんなわけでFate/Zeroの総評……つーか虚淵玄の総評?

 『PHANTOM』、『ヴェドゴニア』、『鬼哭街』、『沙耶の唄』、
そして『殺戮のジャンゴ』……これら一連の作品の流れの中にあるには、
今作はこの上なく相応しいものです。
 虚淵玄の作品らしく血と硝煙と哀切と怨恨と殺意悪意狂気絶望その他諸々に
塗れた本作、Fate/Zero。
 その根底にあるのは相変わらずの真理、──聞こえの良い『創作の世界』に
於いては忘れられがちな、『幸福と不幸は等価交換』という真理。
 誰かの幸福は誰かの不幸がなければ存在せず、その逆も然り。
 例えば『PHANTOM』に於いて物語の最後にささやかな幸せを得た『彼女』が、
元はまるで死神のように無慈悲な暗殺者だったように。
 例えば『沙耶の唄』に於いて今際の際にようやく結ばれた彼女らの愛が、
世界を侵す狂い咲きの大輪となったように。
 Fate本編における幸いのためには、切嗣もアイリも舞弥も時臣も雁夜も
みんなみんな、みーんな『踏み台』になるしかないのです。

 そして真に恐ろしいのは虚淵玄というライターの筆力にあります。
 彼の文章は徹頭徹尾、傍観者として在ります。そしてその筆力は
読者も巻き込んで放さない。共に『俯瞰からの観察者』という共犯にする。
 その拘束力は、酸鼻極まる惨劇を前にしても読者を逃がすことが
ない──絶対的な傍観者、つまり舞台の上で究極的なトラデジーを演じる
彼らから目を放す事も、彼らに救いの手を差し延べる事も許さない。
 この拘束力が彼の文章の妙であり、しかしそんなものは副産物でしかありません。

 何故、彼は自身の描く登場人物たちをああまで絶望させられるのか。

 これは特に『鬼哭街』で顕著なものですが、彼はまるで自身が描く
主人公に対して恨みすらあるのではないかと思わせる程に救いようのない
物語を用意している。
 普通、躊躇います。
 尋常な作り手であれば、登場人物の中で少なくとも主人公とヒロインだけには
試練の上で幸福を与えます。万人に愛される結末であり、また作者の
子供同然である登場人物に与えられるべき結末とは普通ハッピーエンドの
ことを指すからです。
 それを、何か。
 この悪辣極まる偉大な先達は、彼らにほとんど地獄と言って差し支えないような
艱難辛苦のみを与えるだけ与えている。
 曰く、ただの学生だった少年が闇の世界で最高の暗殺者へと変貌するナイトメア。
 曰く、人ならざるモノへと変質してしまった少年が人外を屠るダークヒロイズム。
 曰く、最愛の妹を辱められ、無二の親友にさえ裏切られた男の復讐譚。
 曰く、世界でひとりぼっちな青年と、世界にそぐわぬ少女のボーイミーツガール。
 曰く、荒唐無稽痛快娯楽、殺し合いに興じ、嘲笑の生き様を曝す女達の狂騒曲。
 こんなシロモノを幾つも世に送り出すのに、一体どれだけの冷徹な思考と
客観的な筆力が必要だろうか。
 重ねて言うのですが──書き手は基本的に、主人公たちには幸福になって
ほしいと思いながら物語を奏でるのが常です。それに逆らえるだけの
筆力は、残酷は、客観性は。
 ──少なくともこの若輩はもちろん、真似出来るライターはそうそう
いるはずがありません。
 故に『Fate/Zero』は奈須きのこ氏ではなく、虚淵玄氏にしか書けない、
まさしく彼の『Fate』足り得るのです。
 この凄まじさ、他ではあり得ない。



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